高遠ジャズ&ブルース 2025 レビュー:Don Kururiの革新的ジャズ体験

2025年9月6日、高遠の澄んだ空気と美しい晩夏の日差しの中、高遠ジャズ&ブルース 2025 のステージに登場したのは、ベースレスという異色の編成で注目を集めるトリオ、Don Kururi でした。
メンバーは、ギターの小橋拓弥、サックスの佐藤敬幸、そしてドラムの原島燎平。彼らは2020年の活動開始以来、常に「既存のジャズの枠にとらわれない表現」を追求してきました。2021年には東京証券取引所で開催された JAZZ EMP at Tokyo Financial Street に出演、2022年には Sapporo Park Jazz Live Contest でグランプリを獲得。さらに2024年にはシンガポールの大型音楽フェス Jazz In July に出演するなど、確実にキャリアを重ねています。その同年には1st EP『Don Kururi』をリリースし、東京から信州へとリリースツアーを展開。各公演はチケット完売と、注目度と実力の高さを証明しました。
今回の高遠ジャズ&ブルース 2025でのステージもまた、その実力を余すところなく発揮した内容でした。セットリストはすべてオリジナル楽曲で構成され、代表曲「Kurn Kuru Donguru」「Booze Shelter」「どんぐりダンス」「Silence」「Orbit」「Happy Tree Friends」、そして会場を大きく揺らした「游ぐ」まで、独自の世界観を持つ曲が次々と披露されました。
特に印象的だったのは「游ぐ」。佐藤敬幸のサックスが物語を描くようにメロディを奏で、その流れに呼応するように小橋拓弥のギターが繊細なテクスチャーを重ねていきました。ときには John Martyn を思わせる浮遊感のあるサウンドも聴かせ、そこに原島燎平のドラムが絶妙な呼吸感とリズムの骨格を与えることで、楽曲全体が有機的に広がっていきました。この瞬間、観客はただ聴くだけでなく、音楽そのものを体感していたと言えるでしょう。
Don Kururiの魅力は、三人の卓越した個性が互いを補完し合うバランスにあります。サックスがリードをとり、ギターが色彩を与え、ドラムが構造を生み出す。ベースレスという一見大胆な編成が、逆にそれぞれの楽器の可能性を最大限に引き出し、聴き手に新しい発見をもたらすのです。
会場の観客からも終始大きな拍手と歓声が送られ、楽曲ごとのインプロビゼーションには驚きと笑顔が溢れました。演奏が進むにつれて、観客とステージが一体となっていく空気感は、フェスティバルという場だからこそ生まれる特別な体験だったと言えるでしょう。
Don Kururiはこれまでにも原朋直、Atori Yuki、高橋佑成といった名だたるゲストを迎え、常に新しい挑戦を続けています。今回のステージでもその探究心が存分に発揮されており、「このバンドはさらに大きな未来を切り開いていく」という予感を強く抱かせました。
最後に、この日聴いたオリジナル曲の数々は、2024年にリリースされたEP『Don Kururi』でも体験できます。フェスティバルで心を動かされた方も、今回来られなかった方も、ぜひこの作品をコレクションに加えてみてください。きっと、ライブ会場で味わったあの瞬間を追体験できるはずです。
三人の卓越した演奏、オリジナル楽曲の魅力、そして観客を巻き込むパフォーマンス。
これこそが、高遠ジャズ&ブルース Don Kururi のステージが残した最大の印象です。
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